~ピュアメディカルクリニックのドクターブログより~
みなさんこんにちは、ピュアメディカルクリニック橿原院の木幡です。
今回は栄養・ダイエット関連の記事になりますが、栄養というのは実に難しい側面があります。
どのようにすればより健康でいられるのか、というのが調べれば調べるほど、私たちが考えている以上に複雑だからです。
昔みたいに、ビタミンCが不足したら壊血病になるとか、そんな単純なレベルの話ではなくなってきています。
カロリー制限がどうやら寿命延伸に効果がある、ということについてはウィスコンシン大学やアメリカ国立老化研究所がアカゲザルで行った実験でどうやら確かなようで、これは下のグラフにまとめられます。
※アンチエイジング医学2017Vol.13 No.2より引用、一部改変
心血管疾患(心筋梗塞、狭心症など)は両施設で差があったものの、ガン、糖尿病については同様の結果が得られていて、カロリー制限している方がガン・糖尿病の発症率は低くなっているのがグラフから読み取れます。
ではカロリー制限とは言うものの、どの栄養素が最も絡んでいるのでしょうか?
カロリーを摂取する内訳としては、炭水化物・タンパク質・脂肪があげられます。
そのうち脂肪の制限はあまり影響しないことがラットでの実験でも示されています。
日本においても、1999年代以降、脂肪に気を付けましょうということで以降、日本人の脂肪摂取量は減っていっているそうですが、それでも糖尿病患者は増え続けているようで、脂肪の摂取量はあまり成人病の罹患率や寿命延伸には関係がないようです。
意外ですよね
脂肪って悪そうなイメージがあるのに。
※Iwasaki K. et al. Influence of the restriction of individual dietary components on longevity and age-related disease of Fischer rats: the fat component and the mineral component. J Gerontol.1988;43:B13-21
タンパク質については微妙なところで、育ち盛りと高齢者(65歳以上)ほど沢山とることが必要で、その中間の年齢層は下の引用文献にもある通り、タンパク質摂取量を減らす方ががんや心血管疾患の罹患率を下げる効果があったり、寿命を延ばす効果があるそうです。
ホエイプロテインをたくさん採っている私は微妙な立場にいますね(笑)
ちなみに、良くいわれる、腎臓への影響は健常者ではなさそうです。
※Levine ME. et al. Low protein intake is associated with a major reduction in IGF-1, cancer, and overall mortality in the 65 and younger but not older population. Cell Metab. 2014;19:407-17
※Halbesma N. et al. High protein intake associates with cardiovascular events but not with loss of renal function. J Am Soc Nephrol. 2009;20:1797-804
ちなみに高齢者の方がたくさんタンパク質を摂らないといけないのは意外に思われるかも知れませんが、どうやら年齢が高くなるほどタンパク同化閾値は上昇する(筋肉が形成され始めるのにより高い血中アミノ酸濃度が必要ということ)そうで、若い時と同じ量だけタンパク質を摂っていても十分身にならないということが起こるようです(それがサルコペニア:筋力低下症候群の原因にもなり得るということ)。
歳を取れば食事に気を付けていないと筋肉は勝手に減っていくという話です。
※アンチエイジング医学2017Vol.13 No.2より引用、一部改変
となると残されるのは炭水化物です。
こうしたことからも、やはり炭水化物によって摂取カロリーが増えるほど、がん・糖尿病・心血管疾患の罹患リスクが高くなるというのはもはや決定事項なのでしょうか?
人間の場合、動物実験のように、ある人を捕まえて施設に入れ、研究のためにずーっと同じような食事を摂らせ続けるなんてこと、出来ませんからね。
なかなか確定的な結論は人間では言いづらいのは事実です。
栄養学の常識がここ30年あまりでもコロコロと変わってきているのも、その難しさを表していると言えます。
ただ確実に言えるのは…、何でも摂り過ぎはいかんということでしょうか。
バランス良く、とはよく言ったもので
みなさん、スイーツもお酒も、食事量も、なんでもほどほど8分目が一番かと